平成22年度入学式を4日後に控えた4月3日、札幌サテライトキャンパスにて、新任教員と本学研修初心者の教員を対象にした、FD研修<基本編>が実施されました。本学教員としての倫理規範や行動指針を共有した後、ほぼ6時間がワークショップに充てられ、参加者は自ら能動的体験型学習のプロセスを体験しながらカリキュラム設計に臨みました。

開会挨拶:新川詔夫学長 学生の多様化に合わせ、教授法の向上を。

 本年4月1日に就任した新川学長より、開会の挨拶がありました。
(要旨)
「少子化で大学全入時代となり、いまでは大学の学生の半数以上が明確な目的を持たずに入学すると言われます。これが留年、進路変更、資格試験不合格などに影響し、大学の社会的信頼度が下がりつつあるという問題につながっています。これは私の持論ですが現在の日本人の精神年齢は実年齢×0.7ないし0.8くらいでしょう。私も含めて。この計算ですと、大学入学時の18歳は15歳以下となります。行動形態も思考形態もそれに近い気がします。
 もちろん、大学の抱える問題には教員側の要因もあります。これまで、教授法が軽視されてきたことがその一つです。私自身、教授法を教授されませんでしたから自分で勉強しました。ただ、学生の多様化で、学生のレベルの少し上の授業をするというこれまでのやり方は通用しなくなっています。昔のように大学ごとに学生の学力は均一化されていません。従って授業も、どの層に焦点を当てるかが難しくなっています。いずれにしろ、いまの大学には教授法の向上、教員の向上、そして教員の倫理面の徹底が必要です。
 このFD研修も、独善的にならぬよう、またマンネリ化しないよう他機関から評価を受けスタンダリゼーションを図るようにしてきたいと思います。
 参加者の先生方、今日一日しっかり学んでいってください」。

ミニレクチャー:国永史郎大学教育開発センター長 まずは意識改革。主語を変える。

(要旨)
「日常の行動習慣のうち95%は無意識によるもので、意識されているものは5%といわれます。教員の行動は学生にとっての環境の一つです。今日は、意識をもって考え、行動すること、とくに言葉を意識してください。たとえば“モラルの低下”という聞き慣れた言葉も、意識してみてほしいと思います。
 本学の教員としての意識をもつこと。資料にある理念、倫理規範、行動指針を度々読み返して確認してください。
 教育に問われるのは、その質の保証です。仕組みをととのえればいいと思われがちですが、それは手段であり、教員力・学習力・そして両者の関係の向上が目的です。さらに、学長のお話の通り、多様化した学生それぞれに対応することが必要でしょう。
 教育の質の保証には教員の意識改革が必要です。今日はまず以下の3点を意識してください。

  • (1)「何を教えるか」ではなく「何ができるようになるか」へ。主語を教員から学生へと変えて考えることを徹底させましょう。シラバスも表現は学生主体であることが基本です。
  • (2)授業は学生のためにあり、組織のもの。
  • (3)学習過程の制御の強化と自律性の支援の両立。
 さて、先ほどの“モラル”という言葉ですが、“モラル”と“モラール”があります。前者は一般的な倫理観、後者は職務遂行上の意欲として使われるようです。“モラル”なくして“モラール”はありえず、“モラール”の高い教員組織は教育改善がスムーズに進みます。
 では、今日の授業設計に、主語を変えて臨み、モラールの高い教員集団をめざしてください」。

アイスブレーキング 自己紹介後、グループに命名。

 今日のメインであるワークショップのために、参加者は4つのグループに分かれました。1グループ平均7名の参加者に、タスクフォースの教員がローテーションで2名ずつ付きます。
 グループごとに着席した後は、参加者一人ひとりが会場全体に向けて簡単な自己紹介。中には3日前まで道東のまちにいた、東京で仕事をしていたという参加者もいました。少し緊張も解けてきたところで、4グループがそれぞれにグループに名前をつけました。名前をつける短時間にグループ内ではさまざまなやりとりが交わされ、当初のぎこちなさもやわらいだようです。

ワークショップ1 小グループ学習法を自ら体験。

 ここから先は実際にグループ学習を体験するワークショップが続きます。最初のワークショップでは、大テーマ「本学の『教育力・学習力向上』への行動規範」のもと、グループごとにテーマ、討論のヒントとなるキーワードが割り振られました。1時間という制限時間内にひとつの意見へまとめ、発表の準備もしなければなりません。各グループが発表資料作成係、記録係、報告者、発表係を決めていっせいスタートを切りました。
 ワークショップ1では、授業のグループ学習でおなじみの「KJ法」を体験しました。「KJ法」は、カードを使ってブレーンストーミングを促し、出たアイデアの整理、統合し、新たな発想や問題解決の糸口発見へとつなげる手法です。
 各グループでアイデアが書かれたカードは30枚ほど。それらが分類され、ホワイトボード上で整理され、発表用のOHPにまとめられました。

【発表】

Aグループ

テーマ「北海道医療大学における教育力向上の活動に各教員は何をするか」

「学生理解」、「教授法の共有、内容、方法」「授業評価」のサイクルの確立と情報交換の重要性が挙げられました。具体的には学生と共有する時間を作る努力、目標を適切に定める、同じ教科担当間でのディスカッション、学部・学科を超えた情報交換などです。

Bグループ

テーマ「北海道医療大学における教育力向上の共同活動へ各教員は何をするか」

「組織上のネットワーク構築」として、学部内の教員が参加するネット掲示板、学部間のコミュニケーション促進のための大学教育開発センターの活用、大学間の意見・情報交換が提案されました。また、授業に複数教員が参加する、模擬授業を見学するなどが挙げられました。

Cグループ

テーマ「学生への対応/各教員の対応」

「学生への対応」「講義」「教員の自己評価」の3つに分けて、学生の話をよく聞く、気づく、習得レベルを知り到達度の低い学生にはていねいなフォローをするなど、学生にしっかり向き合う姿勢を重視した項目が挙げられました。

Dグループ

テーマ「学生への対応/組織的連携ある対応」

講義内容の連続化、自由参加型授業(学生・社会人)を柱に、学生情報の共有、学部・講座・教員間の関係性向上が挙げられ、成績評価に関わらない相談者の存在も提案されました。

 発表終了後には「Bグループの『大学間』には具体的にどんな形があるか」という質問や、「介護を教える教員として、共通点の多い看護の授業をぜひ見てみたい」という要望が出ました。また、ネット上の掲示板については、その長所と短所が議論されました。

ワークショップ2 授業設計:目標

 昼食を終えるとすぐに午後の部がスタートしました。午後の部では、ワークショップ2〜4が行われ、グループ単位で授業設計に取り組みます。各ワークショップとも注意点を伝授するミ二レクチャーから始まり、グループ作業、そして発表で終わります。発表により全員で作成のプロセスを共有、内容を検討できるようになっています。なお、グループ内の記録係、発表係など役割分担はワークショップごとに変えます。

 ワークショップ2のミ二レクチャーは、東城庸介教授(歯学部)によるカリキュラム設計の基本。具体的な注意点を確認したうえで、グループごとに示された設計する科目のくくりに沿って授業の目標設定が始まりました。

  • ※Aグループ 導入教育:基礎ゼミナール---動機づけ
  • ※Bグループ 導入教育:学習スキル
  • ※Cグループ 医療基盤教育:医療倫理
  • ※Dグループ 医療基盤教育:地域連携

 グループによって、KJ法を利用したり、ホワイトボードを使ったり、書ける部分はすぐOHPシートに記入し、後は議論に集中するなど、方法は様々です。 どのグループでも意見は熱く交わされていますが、それをシラバス上の具体的な表現へ結びつけるのは難しい様子。50分間という制限時間は飛ぶように過ぎました。

【発表】

各グループより科目名と一般目標、行動目標が発表されました。

 科目名

  • ※Aグループ 「基礎ゼミナール---よき医療人とは---」
  • ※Bグループ 「大学の授業の受け方」
  • ※Cグループ 「医療倫理(チーム医療と医療連携)」
  • ※Dグループ 「コミュニティー交流(地域医療福祉入門)」

 「議論の焦点が絞れずに、漠然とした目標になってしまった」という反省が発表者からあったように、FD委員の教員から一般目標と行動目標の違いを再確認するようアドバイスがありました。

ワークショップ3 授業設計:方略

 ミ二レクチャーは平藤雅彦教授(薬学部)による様々な学習法の特徴。講義形式、視聴覚教材の利用、学生参加型授業、PBL(問題解決型授業)などのメリット、デメリットが挙げられました。
 ワークショップ3では、15回にわたる授業の1回ごとの内容、方法を決めます。発表資料作成まで含めて30分が充てられ、その後、発表の時間までは休憩の予定でしたが、コーヒーブレイクの間も議論と発表資料作成が続いていました。

【発表】

 どのグループも小グループ学習法やロールプレイ、現職者や先輩学生の登場など、様々な学習法を活用し、アイデアを絞った授業内容を発表しました。各グループの作ろうとする授業のイメージがつかめるようになり、発表後には「アイデアはいいが、実施が可能かどうか」という一歩踏み込んだ質問も増えました。

ワークショップ4 授業設計:成績評価

 いよいよ最後のワークショップ。学生の目標達成度をどう判断するか、評価方法を決めます。志渡晃一教授(看護福祉学部)のミニレクチャーで説明された種々の評価方法のメリット、デメリットをふまえて、各グループでどの評価法を採用するか、その配分をどうするかが検討されました。作業時間は30分間でしたが、学生の達成度をどう測るのが妥当か、最後まで参加教員は頭を悩ませ、議論は深まるばかりでした。

【発表】

 授業の性格上、試験を評価法に採用したグループはありません。また、レポートも、全体のまとめとしてのものより、毎回授業の最後に10分で書ける感想文などが採用されています。「学生が相互に評価する」「交流する外部施設の管理者の評価ももらう」「落とすための授業ではないので、あえて総括的評価は行わない」「個人評価もグループ評価もチェックリストを利用する」など、多彩な評価法が発表されました。

閉会 中身の濃い今日を、あしたに。

 本来なら1泊2日の合宿形式で行うほどの濃さ、深さをもった内容に、1日で取り組んだFD研修でした。FD委員の教員から「様々なことを改めて確認でき、自分にとっても研修になった」との声も聞かれ、新人、ベテラン共にモチベーションアップの機会となったようです。本学に新しい風を入れてくれた参加教員の今後の活躍に大きく期待します。

テーマ

『大学教員の在り方とカリキュラム設計の基本』

スケジュール

9:00

開会挨拶(新川学長)

オリエンテーション

ミニレクチャー

アイスブレーキング

9:45

ワークショップ1

  • 大テーマ:
    本学の「教育力・学習力向上」への行動規範
11:05
発表・討論
( 昼 食 )
12:40

ワークショップ2

  • ミ二レクチャー(授業:カリキュラム設計)
  • グループ作業(授業設計:目標)
13:50 
発表
12:40

ワークショップ3

  • ミ二レクチャー(授業設計:方略)
  • グループ作業(授業設計:方略)
(ティータイム)
15:30 
発表
15:50 

ワークショップ4

  • ミ二レクチャー(授業設計:成績評価)
  • グループ作業(授業設計:成績評価)
16:30 
発表
16:50 
総合討論
17:20 
開会挨拶

FD研修の趣旨

 大学教員は、雇用されている大学の社会的存在価値を高めるために、その大学の教育、研究、社会貢献の発展に寄与する責務をもつ。関連して、管理運営への参加も任務となる。とくに、大学の教育力向上への貢献を第一の責務とし、学生中心の教育を進める責任がある。教員は、その大学の過去、現在を的確に把握し、未来の発展に向かって、的確な行動をとらなければならない。
 この研修の目的は、北海道医療大学の使命をふまえて、本学の最近の動向と現状にたった教員としての在り方と各教員の大学における位置づけを認識し、大学の発展、とくに教育力向上への具体的行動目標を設計できることとする。

目標

  • 1.本学の倫理綱領、PDCAサイクルをふまえ、行動できる。(全体)
  • 2.学生中心の教育を展開できる。(対象)
  • 3.同僚と協働して職務を進めることができる。(共同)
  • 4.本学が求める方策を的確にとらえ、改善にむすびつく行動をとることができる。(行動)
  • 5.大学・学部・学科のカリキュラムの目的、カリキュラム構造にそった授業設計ができる。(教育設計)
  • 6.授業設計にそった授業を適切に遂行できる。(教育実施)
  • 7.授業の実施を踏まえて授業を改善できる。(自己評価と改善)

<参加者アンケートより>

 研修後に記入してもらったアンケートでは、今回のワークショップの内容について参加教員全員から「価値あり」の回答を得られました。また、自ら経験したワークショップ形式の効果についても9割以上が肯定しています。一方、限られた時間の中に密度濃く4つのワークショップが配置され、駆け足での進行になってしまったこともあり、研修時間については半数以上の参加教員が「少ない」と回答。今後の課題となりました。

参加者の声

  • 「他学部・学科の教員との意見交換で、様々な意見、考え方を知ることができた」
  • 「学部・学科を超えた共同作業で、アイデアが生まれてくる過程がよかった」
  • 「教員としての今後の課題をつかめた」
  • 「同じ目的をもった者のグループ討議は、案外楽しかった」
  • 「タスクフォースの先生方がいたことで、具体的な理解、方法の検討ができた」
  • 「もう少し各ワークショップに時間がほしかった」
  • 「時間不足で、まとめきれなかったことが残念」
  • 「学生の目標達成のために“適切な評価”を意識していきたい」
  • 「学部間の先生方と連携していきたい」
  • 「ゼミの指導にワークショップ形式を採用したい」
  • 「教授法、学習方法のバリエーションを増やしたい」

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